日立基本情報



日立の経営動向
. What’s 日立(Hitachi)

日立は、日本最大級の総合電機メーカーであり、かつ日本では唯一、世界でも屈指のコングロマリット(複合企業体)と言われてきました。
日立は、世界70か国に生産や販売、研究の拠点を持ち、会社数は、947社、社員数は33万人を超え、世界で活躍するグローバルな企業集団です。
事業は、大きく分類して10事業グループから構成されます。日立の事業領域は、電機に関する事業だけでなく、不動産や金融まで手を広げています。「コングロマリット」と言われるゆえんです。こうした事業のひとつひとつが日立グループ947社に展開されています。
※コングロマリット(複合企業 conglomerate)は、直接の関係を持たない多岐に渡る業種・業務に参入している企業体のこと。

 




. 重電事業からIT事業への経営転換で過去最高赤字に(2008年)

日立は創業から、重電中心のエレクトロニクス事業を基幹事業として進めてきましたが、1990年にはいると、IT・情報技術が急速に発展しました。それにともないエレクトロニクス産業の中心も大きく変革し、日本の電機産業の構造や企業の経営方針にまで影響をあたえることになりました。
日立も従来基幹事業をして進めてきた重電中心のエレクトロニクス事業から、ITを中心にしたエレクトロニクス事業への経営の転換を図りました。
(1)  重電の事業からIT事業へ経営大転換を発表
日立が、重電の事業からIT事業へ経営の大転換を宣言したのが、1999年に発表した中期経営計画「i.e.Hitachiプラン」です。うたい文句は、「「製造業」からインターネット技術を有効活用した「ソリューション企業」へ、「モノづくりは海外へ」」です。それまで、日立は、重電中心のエレクトロノクス事業を基幹事業に、モノづくりにこだわり「技術の日立」でやってきたので、まさに、経営の大転換です。
Here,The Future 日立を見れば未来がわかる」というキャッチフレーズでIT事業中心に事業拡大の経営を推進しました。
重点施策は
    グローバル化の加速-アジアを中心とした製造部拠点の海外展開
    事業の組み換え・最適化による高収益体制
    新規事業の創出、ベンチャービジネスへの出資拡大-重電部門からの撤退
    IT分野への資本の集中投下-重電部門の人員を情報部門へシフト、重電の不採算製品の廃止
    製造部部門の分社化、関連企業を含めた再編を実施-重電部門の人員を情報部門へシフト
    年功を払拭した成果主義の評価・報酬の労務システムの導入
(2)  IT部門の注力事業へ過剰な設備投資強行で経営破たん
i.e.Hitachiプラン」を推進して直ぐに、ITバブル崩壊の大波をかぶることになりました。それにも拘わらず、IT部門の注力事業へ過剰な設備投資を強行したために、世界市場におけるIT関連需要の低迷と市場価格の下落で大打撃を受け、注力事業の電子デバイスやデジタルメディア部門が大幅な減益や赤字となりました。ハイリスクハイリターン経営の破綻です。
当時、日立本体には、赤字3兄弟とよばれ、全体の業績を食いつぶす事業がありました。ハードディスクドライブ、薄型テレビ、液晶パネルです。いずれも注力事業でした。
また、ものづくり技術の海外流失、ベテラン技術者の大量リストラで、モノづくり技術の伝承が途絶えました。その象徴が、日立の経営と信頼を揺るがした、2006年に起きた原子力発電所のタービンの羽が折れるという、あってはならない事故の発生です。
さらに、利益第一主義経営で導入した労務システム成果主義制度化で、社会的不正が続発しました。
原子力発電所でのデータねつ造、公共事業の入札での談合、などです。
以上から、「i.e.Hitachiプラン」の経営計画は、失敗に終わりました。
年度
経営状況
2001
IT不況となり、注力事業であった電子デバイス部門は巨額の経営赤字を計上
2002
IBMから、ハードディスクドライブ事業を2800億円で買収したが、この事業は5年間で1000億を超える巨額の赤字を計上
2006
ハードディスクドライブ(HDD)やデジタルメディア・民生機器部門の業績悪化、電力・電機部門の大幅な減益
2007
デジタルメディア・民生機器部門が1009億円の営業赤字
2008
世界同時金融危機による世界的不況下で、日本の製造業として史上最悪の7000億円の赤字計上
 
3.「脱・総合電機」「選択と集中」で強い日立の復活へ(2009年)

日立は2009年3月期に計上した過去最高の赤字により、大胆な経営改革での「日立再生」を余儀なくされました。
日立は、2010年の創業100周年に向けて、「安定的な高収益構造を確立」し「強い企業集団としての日立の復活」をめざし、これまでの総合電機としての「事業拡大路線」をやめて、日立全体の事業を、社会インフラ分野に関わる「社会イノベーション事業」に絞り込んでいく「選択と集中」路線へと経営を大転換しました。
※社会イノベーション事業-「高度な情報通信技術ITに支えられた高信頼・高効率な社会インフラシステムを提供する事業」で、情報通信・電力・交通・産業・環境などに係わる事業。

「強い日立復活」のシナリオは
(1)  各事業を、需要に見合う体系に改革(守りの経営)
需要減のなかでも安定収益を確保するため、赤字事業部門を分社化、売却する。自動車機器部門とデジタル家電事業は、分社化して新会社とした。半導体部門の会社ルネサスは、NECと統合した。
(2)  グループ経営の事業構造を「社会インベーション事業」にシフト(攻めの経営)
主要上場子会社を完全子会社化し、収益の全てを社内に取り込む。「社会イノベーション事業」に経営資源を注入する。カンパニー制を導入し、各事業部門の目標と責任の明確化、意思決定と事業運営を迅速化する。944社を主要グループ会社40社(当時)の事業経営単位にくくって並列経営する。
これらの施策により。2010年度に「安定的な高収益構造を確立」し「強い企業集団として日立の復活」を果たすとしました。
※「社会イノベーション事業」の中心は、「i.e.Hitachiプラン」で切り捨てようとした事業部門なのです。そして、そういう意味で、日立が創業以来基幹事業としてきた分野への「原点回帰」とも言えます。

社会イノベーション事業強化の取組み


 
4「社会イノベーション事業」で経営のV字回復を果たす(2010年~2014年)

 日立は2010年5月に、「2012年中期経営計画」を発表しました。経営戦略として「社会イノベーション事業による成長」と「安定的経営基盤の確立」を掲げ、それを3つの施策(1)日立の強みを発揮するグローバルな成長戦略の推進、(2)社会イノベーション事業への経営リソースの重点投入、(3)経営基盤強化による収益安定化、をベースに進めていくとしました。
 2011年3月期の連結決算は、当期純利益が2,388億円で、1990年度に記録した2,301億円を超え、過去最高益となりました。
 2012年3月期の連結決算は、純利益が前期比45%増の3,471億円で、2期連続で過去最高益を更新した。
 2014年3月期の連結決算は、営業益が23年ぶり過去最高益となりました。
 内部留保も積み増しして、2兆9千億円超となっています。
 一方で、国内従業員数、国内子会社数は、経営のグローバル化により、国内事業の構造改革と海外展開の加速で激減しています。
日立の連結損益 単位:億円
決算期
2009
2010
2011
2012
2013
2014
3月期
3月期
3月期
3月期
3月期
3月期
売上高
100,003
89,685
93,158
96,658
90,410
96,162
営業利益
1,271
2,921
4,445
4,122
4,220
5,328
税引前当期純利益
-2,898
635
4,322
5,577
3.445
5,681
当期利益
-7,873
-1,069
2.388
3,471
1,753
2,649
一株配当()
3
0
8
8
10
10.5
内部留保
24,301
22,392
24,169
27,333
29,068
29,546

売上高、従業員数、子会社数の国内・海外比較

2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
売上高
構成比
国内
59%
59%
57%
57%
59%
55%
海外
41%
41%
43%
43%
41%
45%
従業員数(人)
361,796
359,746
361,745
323,540
326,240
320,725

国内
234,519
230,948
216,393
212,302
207,727
196,207
海外
127,277
128,798
145,352
111,238
118,513
124,518
連結子会社数(社)
943
900
913
939
963
947

国内
403
365
351
340
314
283
海外
540
535
562
599
649
664

経営基盤強化のための事業ポートフォリオの改革


5.「社会イノベーション事業」のグローバル展開で成長目指す(2014年~)

 日立は、2014年5月12日、2015年度を最終年度とする「2015中期経営計画」を発表しました。
 2015年度の業績見通しを、売上高が10兆円、営業利益率が7%超、当期純利益は3500億円超としています。
 
 2015中期経営計画では、「成長の実現と日立の変革」をテーマに掲げる一方、サービス事業を強化し、イノベーションを実現する「イノベーション」、社会イノベーション事業をグローバルに提供し成長する「グローバル」、業務のグローバル標準化と変化に迅速に対応する経営基盤の確立に取り組む「トランスフォーメーション」の3点を経営のフォーカスポイントにあげています。
 また、海外の従業員を約3割増の15万人態勢に拡充。海外売上高比率を50%に拡大するとしています。


次期中期経営計画の目標は…東原社長

「売上高営業利益率は10%以上を目指す。コングロマリット(複合企業)であることを強みにする。売上高が伸びないと元気がでないため、増収も狙う」

コスト構造改革「スマトラPJ」で、越すと4,000億円を削減

 日立は、「2015年中期経営計画」で実現にむけたコスト構造改革「Hitachi Smart Transformation Project」(以下、「スマトラPJ」)で、最終年度までの累計で4千億円のコスト削減(2,200億円は達成済み)を目指します。
 「スマトラPJ」は、生産・製造・開発に関わるコスト削減に止まらず、労働条件や人員削減、福利厚生にも踏み込んで、その切り下げを高校しており、社員の働き方や生活に大きな影響を及ぼしています。
スマトラによるコスト削減効果(単位:億円)

2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
(見通し)
(計画)
年度
350
750
1,100
900
900
累計
350
1,100
2,200
3,100
4,000

 
参考資料
※日立グループ サステナビリティレポート 2015 2014年度実績
※2015中期経営計画 -進捗状況について- 2014年5月12日